お部屋探しをしていると、「定期借家」という言葉を目にすることがありますよね。家賃が安そうだし、いい物件が見つかりそうだと思う反面、なんだか不安も感じてしまいます。今回は、定期借家契約について詳しく見ていきましょう。定期借家契約のメリットもありますが、デメリットもしっかり理解しておくことが大切です。
定期借家契約とは?普通借家契約との違い
まずは、定期借家契約とはどんなものなのか、普通借家契約との違いを見ていきましょう。
定期借家契約は、契約期間が決められていて、その期間が終わると必ず契約が終了する仕組みです。一方、普通借家契約は、契約期間が終わっても更新ができ、長く住み続けることができます。
定期借家契約では、契約期間が終わったら必ず退去しなければなりません。もし引き続き住みたい場合は、新たに契約を結び直す必要があります。これを「再契約」といいます。でも、再契約ができるかどうかは、家主さんの意向次第なんです。
普通借家契約では、契約期間が終わっても、特に問題がなければ自動的に更新されます。家主さんが正当な理由なく更新を拒否することはできません。つまり、借主さんの立場が守られているわけですね。
定期借家契約は、家主さんにとってはメリットが大きい契約方法です。でも、借主さんにとってはデメリットも多いのが現実。ここからは、定期借家契約をやめたほうがいい理由について、詳しく見ていきましょう。
定期借家をやめたほうがいい5つの理由
契約期間が終われば必ず退去しなければならない
定期借家契約の最大のデメリットは、契約期間が終わると必ず退去しなければならないことです。普通借家契約なら、特に問題がなければずっと住み続けられますが、定期借家契約ではそうはいきません。
例えば、3年間の定期借家契約を結んだとしましょう。3年経ったら、必ず引っ越さなければなりません。せっかく気に入った部屋や環境に慣れても、時間が来たら出ていかなければならないのです。
引っ越しは時間も手間もかかりますし、費用もバカになりません。特に、家族で住んでいる場合は大変です。子どもの学校や仕事の都合など、考えなければならないことがたくさんあります。
また、契約期間が終わる前に、家主さんから契約終了の通知が来ます。通常は6ヶ月前から1年前くらいに通知が来るのですが、この時期になると、次の引っ越し先を探さなければならないプレッシャーがかかります。
途中解約が難しい
定期借家契約では、途中で解約することが難しいのも大きな問題です。普通借家契約なら、引っ越しの1ヶ月前に伝えれば解約できることが多いのですが、定期借家契約ではそうはいきません。
例えば、仕事の都合で急に引っ越さなければならなくなった場合、定期借家契約だと簡単には解約できません。契約書に特別な記載がない限り、残りの契約期間分の家賃を支払わなければならないこともあります。
もちろん、転勤や病気など、やむを得ない事情がある場合は例外的に認められることもあります。でも、その判断は家主さん次第。交渉が必要になるかもしれません。
家賃交渉がしづらい
定期借家契約では、家賃の交渉がしづらいのも特徴です。普通借家契約なら、契約更新の時に家賃の値下げ交渉ができることがあります。でも、定期借家契約の場合、そういった交渉の機会がありません。
最初に決めた家賃で、契約期間中はずっと支払い続けることになります。周りの家賃相場が下がっても、自分の家賃は変わらないということもあり得るのです。
また、再契約する場合も、家主さんが提示した条件をそのまま受け入れるしかありません。家賃が上がっても、「嫌なら出ていってもらって構いません」と言われかねないのです。
再契約時に条件が変わる可能性がある
定期借家契約の場合、再契約時に条件が変わる可能性があります。これは、借主さんにとってはとても不安な要素です。
例えば、最初は2年契約だったのに、再契約時に1年契約になってしまうかもしれません。または、家賃が上がるかもしれません。さらに、今まで許可されていたペットの飼育が禁止されるなど、生活スタイルに影響する条件が変わることもあります。
普通借家契約なら、正当な理由がない限り大きな条件変更はできません。でも、定期借家契約の場合は、再契約時に新しい契約を結ぶことになるので、条件が大きく変わる可能性があるのです。
設備の不具合に対応してもらえないことも
定期借家契約の物件では、設備の不具合に対応してもらえないこともあります。これは、特に契約期間の終わりが近づいてくると顕著になります。
例えば、エアコンが壊れても、「もうすぐ契約が終わるから」と修理してもらえないかもしれません。または、壁紙が剥がれてきても、そのままにされることもあります。
普通借家契約なら、長く住むことを前提としているので、家主さんも物件の維持管理に積極的です。でも、定期借家契約の場合、「どうせもうすぐ出ていくのだから」という考えになりがちなのです。
特に、取り壊しが決まっている物件などでは、最小限の修理しかしてもらえないことがあります。快適に暮らすためには、自己負担で修理をしなければならないこともあるかもしれません。
定期借家契約のメリット
ここまで定期借家契約のデメリットを見てきましたが、メリットもあります。ここからは、定期借家契約のポジティブな面を見ていきましょう。
家賃が安いケースも
定期借家契約の最大のメリットは、家賃が安いケースが多いことです。普通借家契約と比べて、同じような条件の物件でも家賃が安く設定されていることがあります。
これは、定期借家契約のデメリットを補うための措置といえます。契約期間が限られていたり、更新ができないというデメリットがある分、家賃を安くすることで借主を集めようとしているのです。
例えば、同じマンションの同じ間取りの部屋でも、普通借家契約の部屋より定期借家契約の部屋のほうが、1万円から3万円ほど家賃が安いということもあります。初期費用も安く設定されていることが多いので、引っ越しの際の出費を抑えられる可能性があります。
特に、都心部や人気エリアでは、定期借家契約を利用することで、普段なら手が出ないような物件に住めるチャンスがあります。予算内で、より良い立地や広い部屋を借りられる可能性があるのです。
良質な物件に出会えるチャンス
定期借家契約のもうひとつのメリットは、良質な物件に出会えるチャンスがあることです。これは、定期借家契約が使われる背景と関係があります。
定期借家契約は、家主さんが一時的に家を空ける際によく使われます。例えば、転勤で数年間家を空けるけれど、いずれは戻ってくる予定がある場合などです。このような場合、家主さんの自宅を借りることができるのです。
自宅として使っていた物件なので、賃貸用に建てられた物件よりも質が高いことが多いです。間取りや設備、内装などが充実していることが多く、快適に暮らせる可能性が高いのです。
分譲マンションや一戸建てなど、普段なら賃貸では借りられないような物件に住めるチャンスもあります。良質な物件に、比較的安い家賃で住めるのは、定期借家契約ならではのメリットといえるでしょう。
こんな人には定期借家がおすすめ
定期借家契約には、デメリットもメリットもあります。では、どんな人に定期借家契約がおすすめなのでしょうか。ここでは、定期借家契約を積極的に検討してもいい人について見ていきましょう。
短期間の居住を考えている方
定期借家契約は、短期間の居住を考えている人にはピッタリです。例えば、以下のような人におすすめです。
転勤で数年間だけ引っ越す必要がある人:転勤の期間が決まっている場合、その期間にぴったり合わせた契約ができます。普通借家契約だと2年契約が一般的ですが、定期借家契約なら1年や3年など、柔軟な契約期間を設定できることが多いです。
留学生や短期の研修生:日本に滞在する期間が決まっている留学生や研修生にとって、定期借家契約は便利です。滞在期間に合わせて契約できるので、無駄な家賃を払う必要がありません。
就職や進学で一時的に引っ越す学生:大学や専門学校に通うために引っ越す学生さんも、定期借家契約を検討してみるといいでしょう。卒業までの期間が決まっているので、その期間に合わせて契約できます。
リモートワークで一時的に地方に住む人:最近増えているのが、リモートワークを利用して一時的に地方に住む人です。数ヶ月から1年程度、都会を離れて地方で暮らしてみたい人にとって、定期借家契約は良い選択肢になります。
このように、あらかじめ住む期間が決まっている人にとって、定期借家契約はメリットが大きいといえます。契約期間を自分の予定に合わせられるので、無駄な出費を抑えられます。
引っ越しが苦にならない方
定期借家契約は、契約期間が終わると必ず引っ越さなければなりません。そのため、引っ越しが苦にならない人におすすめです。
例えば、以下のような人が該当します。
荷物が少ない一人暮らしの人:一人暮らしで、特に大きな家具や荷物を持っていない人は、引っ越しのハードルが低いです。定期借家契約で良い物件が見つかれば、積極的に検討してもいいでしょう。
新しい環境に適応するのが得意な人:引っ越すたびに新しい環境に身を置くことになりますが、それを楽しめる人もいます。新しい街や人との出会いを楽しめる人にとって、定期借家契約は新しい体験のチャンスになります。
仕事の都合で頻繁に引っ越す必要がある人:仕事の性質上、数年おきに引っ越す必要がある人もいます。そういう人にとっては、定期借家契約のデメリットはあまり気にならないかもしれません。
ミニマリストやノマド的なライフスタイルを好む人:最小限の荷物で生活し、場所にとらわれないライフスタイルを好む人にとって、定期借家契約はフィットする可能性があります。
このように、引っ越しを前向きに捉えられる人や、引っ越しの負担が少ない人にとって、定期借家契約はデメリットよりもメリットのほうが大きいかもしれません。
定期借家契約時の注意点
定期借家契約を結ぶ際は、いくつか注意すべき点があります。ここでは、契約時と退去時の注意点について見ていきましょう。
契約書の確認は慎重に
定期借家契約を結ぶ際は、契約書の確認を慎重に行うことが大切です。普通借家契約以上に、細かい点まで注意深くチェックする必要があります。
特に以下の点は、しっかり確認しましょう。
契約期間:契約期間がはっきりと明記されているか確認しましょう。また、その期間が自分の予定と合っているかも確認が必要です。
解約条件:途中解約の条件がどうなっているか、よく確認しましょう。やむを得ない事情で解約する場合の取り扱いについても、明記されているか確認が大切です。
再契約の可能性:再契約ができるかどうか、また再契約時の条件がどうなるかについても、可能な限り確認しておきましょう。
修繕義務:設備の故障や不具合が起きた場合、誰がどこまで修繕する義務があるのか、明確になっているか確認しましょう。
原状回復義務:退去時にどこまで原状回復する必要があるのか、具体的に記載されているか確認が必要です。
これらの点をしっかり確認することで、後々のトラブルを防ぐことができます。不明な点があれば、必ず不動産会社や家主さんに質問しましょう。曖昧なまま契約するのは避けたほうがいいですね。
退去時のトラブルに備えて
定期借家契約では、退去時にトラブルが起きやすいという特徴があります。これは、必ず退去しなければならないという性質上、家主さんと借主さんの利害が対立しやすいためです。
退去時のトラブルを防ぐために、以下のような点に注意しましょう。
入居時の状態をしっかり記録する:入居時に、部屋の状態を写真や動画で記録しておきましょう。壁や床の傷、設備の状態など、細かく記録しておくと、退去時のトラブル防止に役立ちます。
定期的に部屋の状態をチェックする:住んでいる間も、定期的に部屋の状態をチェックし、記録しておくといいでしょう。特に、設備の不具合や壁紙の剥がれなどは、早めに家主さんや管理会社に報告しておくことが大切です。
退去の意思表示は早めに:契約期間が終わる前に、退去の意思表示をする必要があります。この時期は契約書に明記されていることが多いので、しっかり確認しておきましょう。早めに意思表示をすることで、スムーズな退去につながります。
立ち会い確認をしっかり行う:退去時には、必ず家主さんや管理会社の人と一緒に部屋の確認をしましょう。その場で修繕箇所や費用の負担について話し合い、合意を得ておくことが大切です。
これらの点に注意することで、退去時のトラブルを最小限に抑えることができます。特に、原状回復義務をめぐるトラブルは多いので、入居時から退去時まで、しっかりと記録を取っておくことが重要です。
まとめ:定期借家契約は慎重に検討を
定期借家契約には、メリットとデメリットがあります。契約期間が限られていて必ず退去しなければならない、途中解約が難しいなどのデメリットがある一方で、家賃が安かったり良質な物件に出会えるチャンスがあるというメリットもあります。
自分の状況や将来の計画をよく考え、定期借家契約が自分に合っているかどうか、慎重に検討することが大切です。また、契約を結ぶ際は、契約書の内容をしっかり確認し、不明な点は必ず質問するようにしましょう。
定期借家契約は、使い方次第で非常に便利なツールになります。ただし、デメリットもあるので、よく理解した上で選択することが重要です。お部屋探しの際は、定期借家契約についてもしっかり考えてみてくださいね。